2005年10月14日(金) 天気:雨
コンバージョンレンズを使ってみる
コンパクトカメラと一眼レフカメラをくらべてみよう。一眼レフカメラを使うメリットには,どのようなものがあるだろうか。よく言われることとしては,一眼レフカメラを使うと,望遠レンズや広角レンズなど,いろいろなレンズを使って撮影を楽しむことができる,というものがある。
撮影レンズをレンズを交換することのできるカメラは,古くからあった。しかし,そのようなカメラは,フォーカルプレーンシャッターを使った高価なカメラであったり,操作に慣れが必要な大型カメラであったりした。だれもが手軽に使えるようなタイプのカメラのほとんどは,撮影用のレンズは固定されていた。
そのようなカメラのユーザにも,望遠レンズや広角レンズを使いたい,という要望は少なくなかったのだろう。撮影レンズが固定されたカメラ用に,フロントコンバージョンレンズが供給されていたケースもいろいろとあるようだ。フロントコンバージョンレンズとは,撮影レンズの前に取りつけることで,撮影レンズの焦点距離を長くしたり,短くしたりできるような製品である。
1979年発売のキヤノン「オートボーイ」は,まさに「押すだけ」でだれでもきれいな写真を撮ることができる,フルオートカメラである。コンパクトカメラはフルオートの時代になり,写真を撮る人口はますます増加したものと思われる。そして,コンパクトカメラだけを使うユーザも,望遠レンズや広角レンズを使いたいと思ったのかもしれない。
こんなときは,フロントコンバージョンレンズを使うしかない。と,だれが思ったのかはしらない(笑)。ただ,その後まもなくして,「オートボーイ用望遠広角レンズセット」という商品が登場していた。もっとも,それは,キヤノン製品ではなかった。そのようなフロントコンバージョンレンズが,いろいろなカメラ用に売られていた。
オリンパス「AFL」用にも,フロントコンバージョンレンズが発売されていた。このカメラを入手したときに,付属していたものである。もちろんこれも,オリンパス製品ではない。
このフロントコンバージョンレンズを装着すると,ファインダーや測距窓も覆うようになっている。これによって,撮影範囲をファインダーで確認でき,さらにオートフォーカスの補正もおこなうようになっているのであろう。よく工夫された製品である。
しかし,その実用性はどう判断すべきだろうか。まず,このレンズを装着した場合,撮影レンズの焦点距離が1.3倍になると,説明書に記載されている。オリンパス「AFL」の撮影レンズの焦点距離は38mmなので,49.4mmになるということだ。これは,一眼レフカメラの「標準レンズ」であり,「望遠レンズ」というイメージには遠い。また,装着していないときの38mmという焦点距離は,「広角レンズ」というには少々物足りない。
このフロントコンバージョンレンズは,けっしてコンパクトなものではなく,扱いも面倒である。それだけの苦労をして,得られる効果が1.3倍というのは,やはり寂しいものがある。
左 フロントコンバージョンレンズ不使用(38mm相当)
右 フロントコンバージョンレンズ使用(49mm相当)
これくらいの「差」であれば「足」で工夫できる範囲だろう。
やがて,リアコンバータを内蔵した「2焦点カメラ」が登場し,ズームレンズを搭載したコンパクトカメラの出現を見るに至る。簡単に表にまとめてみよう。
年 | 名称 | 備考 |
1975 | コニカ C35EF (ピッカリコニカ) | フラッシュ内蔵コンパクトカメラ |
1977 | コニカ C35AF (ジャスピンコニカ) | 最初のオートフォーカスカメラ |
1979 | キヤノン AF35M (オートボーイ) | 最初のフルオートコンパクトカメラ |
1985 | フジカ タンデム | 最初の2焦点レンズつきフルオートコンパクトカメラ |
1987 | パナソニック ZOOM900 | 最初のズームレンズつきフルオートコンパクトカメラ |
フロントコンバージョンレンズは,時代の谷間にひっそりと咲いただけの存在であったということだ。
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