撮影日記


2005年10月07日(金) 天気:曇のち雨

赤いだけがヒガンバナではない

秋の彼岸のころに,田の畦(あぜ)や川の土手などに,真っ赤な花が密生しているのを,よく見かけるだろう。ヒガンバナは,そのような,人の生活に近い場所によく見られる花である。その花の色があまりに鮮やかなため,たいへん目立つ花であることからか,毎年のようにヒガンバナの写真を撮る人も少なくないであろう。しかも,人の出入りのあるところによく見られる花なので,身近なところにも撮影できる場所があったり,名所と言われるところでも,撮影現場のすぐ近くまで自動車で乗り付けることがやりやすいなど,そういう意味では撮りやすい花であることは間違いない。
 しかし,実際に撮ろうと思うと,難しい面もある。
 ヒガンバナは,1本の茎に,通常,6つの花が咲く。その蕊(しべ)はたいへん長く,花から突き出している。空間的に,非常に広い範囲を占めるため,マクロ的に撮ろうと思うと,いろいろな迷いが生じる。
 また,ヒガンバナの花が見られる場所は,人の出入りがある場所なので,遠景を含めて撮ろうと思うと,望ましくない位置に人工物がはいってきたりする。

Nikon F3, Ai NIKKOR 35mm F2S, EB

ヒガンバナのよく見られる場所は,田のまわりや川の土手が代表的である。どちらかというと,田のまわりの方が撮りやすいだろう。そこは,人の手によって,夏草が適度に刈られた状態になっているからである。
 私がよく撮る場所は,川の土手である。そこは,ヒガンバナの花が咲き始めるころは,まだ夏草が茂ったままである。夏草の中に,ヒガンバナの赤い花が,ポツポツと埋もれているのである。それからしばらくするころに,草刈がおこなわれる。草刈は容赦なく,あらゆる草を根元から刈り取っていってしまう。草刈の後には,切り取られた彼岸花の茎や,おちた花,つぼみなどが散乱している。
 そこからさらに,ヒガンバナは茎を伸ばして花を咲かせる。このときが,もっとも撮りやすい時期となる。

ヒガンバナは,さまざまな名前で呼ばれる花でもある。また,その赤があまりに鮮烈なためなのか,それともちょうど彼岸の時期に咲くためなのか,理由はわからないが,不吉な印象をもつ言葉で呼ばれることも少なくない。ヒガンバナには,種子ができない(原生種は,種子ができるらしい)ことや,球根(鱗茎)に毒性物質を含むことに,由来があるのかもしれない。実際,茎を折ったりして出てくる汁に触れると,かぶれることもあるらしい。
 公園のようなところでも,ヒガンバナが見られることがある。その中に,ときどき,白いヒガンバナを見かけることがある。また,これまであまり行ったことのなかったところに,黄色っぽい色のヒガンバナが群れているところもみかけた。これらは,ヒガンバナの一種である改良された園芸品種などであるようだ。
 ヒガンバナは赤いものだけではないのだが,ヒガンバナの別名である「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」とは,赤いものだけを指すらしい。

Nikon F3, Ai Micro-NIKKOR 200mm F4, EB
Nikon F-301, Ai NIKKOR 135mm F2.8S, EB

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