撮影日記


2005年03月21日(月・祝) 天気:晴

OM707は生きている

最近のオリンパスは,すっかりディジタルカメラのメーカーに変貌した印象がある(企業としての主力は,カメラではなく,医療器具などのようだが)。しかし,オリンパスのカメラというと,なにをさしおいても「ペン」シリーズであろう。
 オリンパスペンのシリーズは,小さくて,安くて,だれにでも簡単に,きれいな写真を撮ることができる,という製品であったと思う。機種により,機能などに差がつけられていたが,それぞれその差は明確なものであったと思う。EEシリーズは,「簡単に使える」ことを徹底していたと感じられるし,Dシリーズは露出計などが使いやすく組みこまれていて,シャッター速度や絞りの設定もおこないやすかった。やりたいことが,できるようになっていた。使う人の立場がよく考えられた,すばらしい製品群であったと思う。
 その後の一眼レフカメラ,OMシリーズも,高い評価を得ている。残念ながら,私はこれまで,OMシリーズのカメラを使う機会がなかったので,具体的なよさはわからない。ただ,一部の機種には,古くなるとプリズムに「しみ」が発生しやすいという構造的欠陥を抱えているようで,中古品を購入する場合には注意が必要とされている。

昨日,ジャンクワゴンから救出した,オリンパス「OM707」は,私にとってはじめての,OMシリーズカメラである。このカメラは,ジャンクワゴンで見かけることが多い。それらは一様に,グリップ部の「電池蓋が破損」しているのである。はじめてジャンクワゴンというものの存在を意識したとき,じつはそこにもOM707は存在していた。それは,なくなってしまった,「カメラのドイ紙屋町店」である。そのOM707も,ご多分に漏れず,電池蓋が破損していた。これは,構造的欠陥としか思えない。
 逆に,電池蓋が破損して使えなくなるという現象が必ず発生するのであれば,それ以外の要素は生きている可能性が高い。そこで,ここしばらく,OM707のジャンクの出現を待っていたのである。そして,今回は\500という安値であったこと,標準ズームレンズも\1000で使えそうな状態のものがあったことから,救出してみたのである。電池を入れ,電池蓋のかわりに小さなプラスチックの板を用意し,とりあえずゼムクリップを接点に利用して,パーマセルテープで押さえてみた。すると,OM707は,目を覚ました。やはり,電池蓋以外の部分は,問題ないのであろう。
 構造的欠陥を抱えた電池蓋のあるグリップであるが,OM707の機能的特徴の1つが,じつはこのグリップにある。ここは交換が可能であり,フラッシュが内蔵されたものと内蔵されていないものの2種類のグリップが用意されていた。もし,グリップ部だけ,単体で入手することができれば・・・と思うのだが,電池蓋が破損しただけのジャンク品が出回っているということは,単体での供給も早い時期になくなってしまっていたということを物語っていると思われる。

グリップ下部の電池蓋が破損していたため,パーマセルテープでおさえている。

さて,OM707の使い心地はどうだろうか。まず最初に感じることは,握りやすさである。このグリップは,そういう面では非常によい。大きさ,深さもちょうどよく,どちらかというと前面にあるシャッターレリーズボタンの位置も,絶妙である。フラッシュが内蔵されている分,幅があることも,よい面にはたらいているのであろう。見た目には,かなり長細いスタイルになる。ペンタプリズム部が低いため,実に細いカメラに見えるようになっている。
 さて,実際に撮影しようと思うとどうだろう。まず,このカメラは,フルオートで撮影できるということが,最大の特徴である。絞り,シャッター速度,ピント,すべて自動である。そう割り切ってしまえば,なにも困ることはない。しかし,ほかの一眼レフを使う感覚で「なにか」をしようと思うと,たちまち困ることになる。
 露出制御はプログラムAEのみであるが,プログラムシフトが可能なので,絞りやシャッター速度を任意のものに設定することは不可能ではない。しかし,露出補正がない。ちょうどよい位置にAEロックのボタンはあるのだが,フルオートで撮るというこのカメラの特性を生かすなら,露出補正がある方がありがたい。
 ピント調整も,AF専用となっている。パワーフォーカスといって,レバー操作で,モーターがピントリングをまわしてくれる機能はあるが,これでピント合わせをすることは,非常に難しい。これは,微妙なピント合わせをするための機能ではなく,AFが正常にはたらかない被写体を撮る場合の,緊急措置用の機能であると考えるべきだろう。
 このように,フルオートでお手軽な撮影をするには問題ないが,ふつうの一眼レフの感覚で撮影しようと考えると,まったく「使えない」カメラだと感じることになる。一方,お手軽に撮るときには,この大きなボディは邪魔である。こういう中途半端な性格のためか,このシリーズはあとが続かず,レンズ交換機能も取り去った,Lシリーズへと発展していったのであろう。
 OM707は,MFのOMマウントレンズを使用することもできる。この場合は,絞り優先AE専用のMF機として使える。ただし,ファインダー内のシャッター速度などの表示は,使えない。

OLYMPUS OM-707, OLYMPUS AF 35-70mm F3.5-4.5, GOLD200

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