撮影日記


2004年02月28日(土) 天気:晴のち雨

戦中世代のドナルドダック

昔からあるキャラクターカメラ

以前,たまたま「ドナルドダックカメラ」という「おもカメ」(おもちゃのようなカメラ)を入手した。レンズの焦点距離や明るさは,記載されていない。シャッターは単速で,レバーを上下させることで,露光される。ちなみに,レバーを上に動かしても,下に動かしても,同様に動作する。非常にシンプルなしくみである。
 なにゆゑの「ドナルドダック」なのかといえば,このカメラの背面に,ドナルドダックの絵が描かれているのである。よくみれば,レンズの周囲に,ウォルト・ディズニーのコピーライト表示もされている。この種の「キャラクターカメラ」は,近年でもよく見られる。たとえば,フジのコンパクトカメラに,「ミッキーマウス」や「ハロー・キティ」などのキャラクターをあしらったカメラがあった。
 カメラの機構が簡便であることや,アニメーションのキャラクターを取り入れているあたりから考えて,このカメラは,子どもへの販売を狙ったものであることは,容易に察しがつく。

「おもカメ」は本格的カメラの姿を真似る

中古カメラ店を巡ってみると,ときどき,「一眼レフカメラ」のような姿をした「おもカメ」を見かけることがある。なかには,堂々と「Canon」のロゴを印刷されたものもあるらしい。ただし,その製品とキヤノンの間に,どういう関係があるのかは知らない。「おもカメ」には,それが子ども用のおもちゃだからこそ,子どもがあこがれるような「大人が使うカメラ」の姿が必要になるのだろう。
 ところで,このカメラのデザインをみると,レンズの鏡胴にあたる部分が,階段状になっている。これは,蛇腹をイメージしたもののように思われる。ということは,当時,「大人が使うカメラ」は,蛇腹のついたカメラが一般的だったということが考えられる。
 このカメラが出回った時期を知りたかったので,WWWをいろいろと検索してみた。すると,ディズニーのキャラクターグッズを扱うようなサイトのいくつかで,このカメラらしいものの記載を見つけることができた。それらによると,このカメラの発売時期は,1944年ということらしい。

ベスト判は絶滅危惧種

現在,市場に出回っているフィルムには,ミノックスサイズ,110(ポケットフィルム),IX240(いわゆるAPS),135(35mm判),120および220(いわゆるブローニー判),シートフィルム(大名刺,4×5,5×7,8×10)など,多くの規格のものがある。近年,流通しなくなった規格には,620(インスタマチック)やディスクフィルムがある。かつてはもっとさまざまなサイズのフィルムが流通していた。カメラが一般に出回りはじめたころ,プリントは,引き伸ばしによるものではなく,密着焼きが主流だったものと思われる。そのため,市場からより大きなプリントが求められたときには,大きな規格のフィルムを発売し,よりコンパクトなカメラを求められたときには,小さな規格のフィルムを発売したのであろうと想像できる。そのために,さまざまな規格のフィルムが登場しては,消えていったということになる。そして,ライカが採用した24mm×36mmという「ライカ判」の画面と,35mmフィルムが,現在に至るまでの長い間使われてきているのは,「小さなネガから大きな画像」というコンセプトから,引き伸ばしてプリントを作ることが一般的になったことが大きい要素だったのであろう。
 ところで,「ベス単」とよばれるレンズがある。これは,コダックの廉価なカメラが採用していた,単玉(1枚構成)レンズが,独特の「味のある描写」をすることから,有名になったようである。「ベス単」の「単」は,「単玉レンズ」の「単」である。「ベス」は,「ベスト判」の「ベス」である。ベスト判は,画面サイズ4cm×6.5cm(あるいは4cm×4cm)の小型のものである。ところで,大きい規格のフィルムは,ランニングコストが高い。また,カメラそのものも大きくなる。ライカのような35mmカメラは,まさに精密機械であり,非常に高価なものとなる。ベスト判は,ちょうどその中間に位置するものということができるだろう。35mm判フィルムよりは少し幅の広いフィルムだが,120フィルムよりはかなり狭く,また,極細のスプールに巻かれているために,非常にコンパクトなものになる。
 ベスト判のカメラには,現在の35mm一眼レフの基本形を形作ったといわれる「キネ・エキザクタ」の原型である,通称「ベスト・ポケット・エキザクタ」や,二眼レフの「ベビー・ローライ」のような高級機から,「ベス単」やコニカの「パーレット」のような比較的安価なカメラまで,多くの製品があった。どちらかというと,安価な製品の方が有名だったのではないだろうか,と思う。ただ,ベスト判フィルムは,すでに市場にはほとんど流通していない。コダック,フジ,コニカ,イルフォード,アグファなどからは,すでに発売されていないのである。しかし,クラシックカメラ専門店で,ときどき,クロアチア製のモノクロフィルムが売られているようである。ベスト判のカメラを使ってみたい人は,そういうフィルムを見かけたら,とりあえず買っておく方がいいかもしれない。


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