撮影日記


2004年01月10日(土) 天気:晴

おもちゃを侮るなかれ

ピンからキリまで

返答に困る質問として,たとえば次のようなものがある。

初心者です。カメラを買おうと思います。どんなのがいいですか?

市場に流通するカメラは,数多ある。初心者であれば,その中から何を基準にして選べばよいか,たしかにわかり難いであろう。だから,こういう質問しかできないのは,しかたないのかもしれない。もしこれが,直接,目の前で会話をしているときに受けた質問であれば,いろいろな希望を聞きながら,場合によってはなんらかの資料を提示しながら,回答していくことは可能である。しかし,電子メール(や掲示板など)でいきなりそんな質問を送ってこられても,返答には困るのである。それでもまだ,電子メール(や掲示板など)で,普段から付き合いのある相手であれば,こちらからの問いかけに対するレスポンスも期待できるし,どういう趣味・興味を持っているかということから,ある程度は希望を予想しながら回答することもできる。そうでない相手の場合には,残念ながら,きちんとした回答をすることは難しい。
 さて,どんなカメラを選べばよいか,という問題がある場合,その回答を左右する大きな要因として,「予算」というものがある。値段だけで考えれば,まさにカメラはピンからキリまである。かつて,「カメラ1台,家1軒」というくらい,カメラが高価だった時代もあったようだが,現在,家1軒くらいの価値があるカメラは,カメラというものの総量から考えれば,存在しないに等しいだろう。したがって,「ピン」のカメラというと,ライカやハッセルブラッドあたりを想定しても十分かと思われる。
 一方「キリ」のカメラとしては,なにが考えられるだろうか。それは「おもちゃ」カメラである。おもちゃカメラにもいろいろなものがある。昭和時代前半の東郷堂のカメラなど,今ではコレクターズアイテム化して,一般的な中古カメラに匹敵する価格で売られているものもある。しかし,本来,おもちゃカメラは,「安い」ことが重要な要素なのである。

カメラくん

最近,話題になっていた,おもちゃカメラとしては,100円ショップ「ダイソー」で売られていた,「おもちゃのカメラくん」がある。商品の性質上,売り切れたからといって,追加で入荷があるかどうかははっきりしないようで,すでにほとんどの店頭からは消えているらしい。もし,まだ売っていれば,それは当然ながら100円である(消費税別)。このカメラは,パトローネ入り35mmフィルムを使うことができる。フィルムを交換して,何度でも使うことができる(耐久性は不明)。このカメラを合計3台入手して,そのうち1台の「試し撮り」をおこなってみた。
 ダイソーは,中国の工場において商品を大量生産することでコストを抑えている,という話をテレビで聞いたことがある。このカメラは「Made in China」となっており,その話と整合する。カメラを観察したところ,レンズは,プラスチックの単玉のように見える。そして,小さな円形の穴があいた「絞り」が見える。「レンズつきフィルム」と同様なしくみのようだ。しかし,この「絞り」が,レンズの中央にあるようには見えない。個体によって,微妙にそのずれ方も違うようだ。それは,コストを最優先した結果のことなのだろうか。その点が逆に,「どんな写りをするのか」という興味につながってくるのである。
 「カメラくん」の使い心地であるが,まあ,「レンズつきフィルム」と同様なものである(笑)。しかし,大きな違いが1つある。それは,フィルム巻上げのノブが,背面下部に位置していることである。そして,フィルムカウンタは,底面にある。この位置は,見た目よりは操作性がよいと思われる。

意外と「まとも」で失望する

天気がよいので,「カメラくん」を持って,平和公園へ行ってみた。そして,試し撮りをした。仕上がりは,・・・・意外とまともで,おもしろくない(笑)。同時に,フジの「スマートショット」というカメラも試し撮りをしてみた。このカメラも,簡便なカメラであり,基本的なしくみは「カメラくん」と似たようなものであろう。ただし,メーカー希望小売価格は38倍の差がある(「カメラくん」=100円,「スマートショット」=3800円)。メカニズムを比較すると,「カメラくん」のフィルムカウンタは,自動復元式である。「スマートショット」のフィルムカウンタが,巻き戻し操作にともなって戻っていくのと比較すれば,「カメラくん」の方が,近代的なメカニズムであるといえる。一方,「スマートショット」は,フィルム装填が簡単になっている。
 この2台のカメラで撮りくらべてみると,「スマートショット」の方が,シャープでクリアに写っている。「写ルンです」と同等かそれ以上のものがあると思われる。一方,「カメラくん」の描写は,「スマートショット」にくらべると,甘く,眠い感じがあることは否定できない。とはいえ,100円という価格を考えれば,その価格以上の仕事はしているのではないだろうか。
 しかし,私は,そんな「まとも」な結果を期待していたのではない。もっと,極端な描写をするのではないかと期待していたのである。ちなみに,この日は他にも何台かのカメラの試し撮りをおこなった。そんななかの1つに,例の学研「大人の科学」ふろくピンホールカメラがある。これと比較すれば,「カメラくん」の写りは,たしかに「まとも」すぎて,おもしろみに欠けるであろう。


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