撮影日記


2003年11月12日(水) 天気:晴ときどき曇

FLレンズの謎

キヤノンT80

ある人のご厚意で,キヤノン「T80」というカメラをいただいた。このカメラについて,よく知っている人も多いと思うが,まずは簡単に紹介しておく。これは,キヤノンがはじめて発売した,オートフォーカス機構が組みこまれた一眼レフカメラである。レンズは,小型モーターが内蔵された専用のものが供給されていた。マウントはFDマウントと互換性があるが,絞りリングがないので,「T80」以外のカメラでは使用できないということになっている(ちなみに「T50」に装着してみたら,ちゃんと動いているように見えたが・・・・)。
 「T80」の発売は,ミノルタ「α-7000」の発売後であった。そのため,営業的に成功したとは言えなかったようだ。なお,キヤノンはこの後,Tシリーズの最上位機種「T90」を発売するが,それにはAF機構は組みこまれていない。その後,FDマウントのカメラの製造は終了し,新しくEOSシリーズが登場したことは,よくご存知のことだろう。
 すなわち,「T80」は,FDマウント唯一のオートフォーカス機なのである。

T80はプログラムAE機

キヤノンTシリーズは,「T50」からスタートした。これの露出モードはプログラムAEのみであり,ワインダーを内蔵して,誰にでも簡単に使える一眼レフを目指したものと考えられる。次に,「T70」という機種が登場した。これは,3モードのプログラムAEとシャッター速度優先AEのモードをもち,従来のAシリーズの主力機といえる,「AE−1」ないし「AE−1プログラム」の後継機と考えることができる。その次に「T80」が登場したのである。したがって,「T80」は「T70」にAF機構が加わったようなものと思っていたが,「T80」にはシャッター速度優先AEモードがなく,プログラムAE(5つのモードが用意されているが)専用のカメラなのである。また,ファインダー内などに,シャッター速度や絞りなどの値が表示されない点は,不満である。
 「T80」は,AF用のモーターを内蔵したACレンズ群とFDレンズ群との組み合わせでは,開放測光,プログラムAEでの撮影ができることになっている。また,FLレンズ群との組み合わせでは,実絞りAEでの撮影ができることになっている。また,マニュアルも可能,とのことである。これらは,「T80」発売当時の「日本カメラショー総合カタログ」に記載されている内容である。
 まず,ACレンズやFDレンズで,プログラムAEが動作することを確認した。このとき,液晶表示部には,5種類のプログラムAEのどのモードが使用されているか,などの情報が表示される。FDレンズで,絞りリングのAモードを解除すると,プログラムAEは使用できなくなり,このときはマニュアルモードになる。マニュアルモードといっても,シャッター速度は,1/60秒とBしか選択できない。

実絞りAEは絞り優先AE

つぎに,FLレンズを装着してみた。FLレンズにはAモードがなく,プログラムAEモードで使用することはできない。実絞りAEとして使用できるはずである。ところが,1/60秒とBが選択できるだけのマニュアルモードとしてしか使うことができない。なにか使い方が間違っているのだろうか?故障しているのだろうか?非常に悩んだ。
 たまたま,レンズを外した状態で試してみると,1/60秒とB以外に,実絞りAEモードが選択できることがわかった(液晶パネルに絞りの絵が表示される)。ところがFLレンズを装着すると,実絞りAEモードが解除されてしまう。マウント部をよく観察した結果,レンズを装着することで,マウント内部のボタンが押し込まれ,実絞りAEモードが解除されることがわかった。
 とりあえず,そのボタンが押し込まれないように,レンズの方に穴をあけておくことにした。プリセット絞りのFLレンズだが,絞りを絞ったり開いたりすることで,シャッター速度が変化することを無事に確認することができた。ファインダー内の表示は「P」だけだが,動作はちょうど絞り優先AEのような感じである。ところで,ほかのFLレンズも,やはり穴をあけないといけないのだろうか?FLレンズはこれ1本しかもっていないので,真相はいまのところ闇の中である。


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