撮影日記


2003年11月02日(日) 天気:雨のち曇

可部線存続問題に思う(6)

爆走するクルマ

この秋,三段峡の紅葉は十分に楽しんだ。今日は朝から雨模様だったので,おとなしく写真や機材の整理でもしようかと思ったのだが,午後から天気が回復しそうだったので,軽く撮りにでかけることにした。とはいえ,いまから三段峡へ歩いて入るには時間がない。今年はまだ訪れていない,常清滝へ向かうという選択肢もあるのだが,今日はすなおに可部線を撮ってみることにする。ただし,時間がないので,クルマで撮りまわってみようと考えた。
 とくに計画も立てずにでかけたが,ちょうど布駅に,列車到着の20分ほど前に着くことができたので,軽くここで1枚撮ってみる。次に,安野駅へ行ってみる。ここには気になる光景があるのだが,まだ時期尚早だったようだ。列車が来るまで1時間ほどあったが,すでに三脚をもった人の姿を見かける。私は駅のそばの神社のところに陣取ったのだが,列車の到着が近づくと,その下に多くの人が集まってくる。ちょうどそこから,鉄橋を渡る姿を撮りやすいからだろう。
 ここで三段峡行きの列車の撮影を終え,次の撮影場所を考えながら撤収していると,他県ナンバーのクルマが三段峡方面へ向けて,爆走していった。赤い目立つクルマだったが,いわゆる「追いかけ」撮影をしている鉄道マニアなのだろうか?

楽に追いついてしまう

安野から三段峡方面にクルマを進めると,国道191号線と合流するところで,片側交互通行の規制がおこなわれている。この夏に崖くずれがあったところの復旧工事だ。すでに数台のクルマが連なって信号待ちをしている。先ほどの爆走していった他県ナンバーのクルマの姿はすでになかった。
 やがてクルマは動き出すが,全体に流れは遅い。つまり,無理なスピードを出して走っているわけではない。しかし,田之尻の手前で,先ほど撮影した,三段峡行き列車の姿が遠くに見えた。田之尻付近の速度規制の影響だろう。田之尻を過ぎたあたりでは,三脚を立てている人の姿がいくつかみられた。また,私の前を走っているクルマが,何台か,急に横にそれて駐車帯に入っていった。彼らも「追いかけ」撮影の鉄道マニアなのか?
 そのまま,制限速度前後で走るクルマの列についてずっと走っていったが,上殿まで来たときには,さきほどの三段峡行きを迎えるまで,20分近い余裕ができていた。可部線の列車は,あまりにも遅いということである。なるほど,爆走してでも追いかけ撮影をしたくなるというものだろう。

可部線が生き残るなら

可部線の再生と存続について,いろいろと模索している団体もあるようだ。可部線を鉄道として存続させる場合,その「意義」としては2つのものが考えられる。1つは,沿線住民の日常の足としての存在である。もう1つは,広島市などから三段峡などへの観光地へ,人を連れてくる手段としての存在である。
 沿線住民の足として活用する場合,沿線人口がけっして密ではないことが問題になる。可部線の駅と,少し離れた集落を結ぶ交通手段が確保されなければ,結局使われることはなくなってしまう。そうなると,存続させることは難しくなる。都市部などでよく見られる,「100円コミュニティバス」のようなものが必要になってくるのではないだろうか。それらを便利なものにするには,各駅に停車し,便数と接続についても十分な配慮が必要になるだろう。
 観光地へお客さんを運ぶ手段として活用する場合,その到達時間の絶対的な遅さは,他の交通手段と競合するにおいて,絶対的に不利である。線路の修理,改良や快速運転(今日のような日には,可部と三段峡をノンストップで結ぶ便があってもいいくらいだろう)などは,必須のものになる。
 このあと,戸河内駅付近で,可部行き列車を撮った。これは,ふだんは1両で運転されている便であるが,今日は4両に増結されていた。それは,外から見る限り,立ち客も目立つような混雑ぶりである。鉄道の輸送力は,やはり大きいのである。。


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