撮影日記


2003年08月30日(土) 天気:晴

謎の張りぼてビル群

夜の太田川放水路

今年はどちらかというと「冷夏」だったとはいうものの,やはり昼間は暑い日が多い。夜になると,涼を求めて,川沿いに出てみたくなる。太田川放水路の河川敷には,とくに照明があるわけではないが,周囲の建物からの光がかすかに地面を照らし,歩いたりするには十分な明るさがある。
 土手のすぐふもとは,コンクリートで舗装してあるので,歩きやすい。朝,昼,夜と,ジョギングする人,犬を連れて散歩する人,自転車で通り過ぎる人などが,多く通り抜ける。そんな「道」を,ところどころ,花火で遊んでいる集団を横目に,夜の散歩を楽しんでみる。
 ある晩,上流へ向かって歩いていくと,可部線の鉄橋の向こう,「道」の真ん中に,大きな2つの影がある。動いているような,動いていないような,そしてやはり動いていない。少しずつそれに近づいてみる。それは,移動式の仮設トイレであった。2台,紐でしばられており,「立ち入り禁止」の貼り紙がある。これまで,駐車場のところには仮設トイレがあったが,その周辺にはトイレはなかった。新規に設置されることになったのであろうか?

謎の建物が出現

また,ある晩,同じルートを散歩してみる。2台の仮設トイレは,やはりそこにあった。しかし,その先のようすが少し違う。なにやら,小さなプレハブの小屋のようなものが3軒ほど並んでいる。足場のようなものが見えるので,まだ作りかけなのだろうか。しかし,こんなところに,なにを建てるつもりなのだろう?
 このとき想像したものは,まず,工事用の宿舎ではないか,というものだった。この近くで大規模な工事が予定されており,そこで仕事をする人のための宿舎ないし事務所のようなものではないか,と考えたのである。そのために,仮設トイレも用意されていたのであろう。しかし,この周囲で大きな工事があるようなウワサを聞いたことはない。あるいは,いわゆるホームレスの保護施設のようなものかとも想像した。しかし,広島でそういう施設の必要性が問題になっているとは,聞いたことがない。
 冷静に考えてみれば,この河川敷は,大雨のときには「すぐに川から上がるように」勧告がなされるような場所である。いかに仮設の建物とはいえ,ここに人が一時的にでも「住む」とは思えない。

そして消えていく

ある日,明るいうちに,この建物を見てみることにした。近づいてみると,建物はいわゆる「張りぼて」である。窓のようなものは,黒っぽく描かれているだけである。しかし,一部に実際に開いている窓がある。ガラスなどは入っていない。裏へ回り込むと,足場が組んでいるだけで,人がここに住んだり,事務所などとして使うようなものではないことがすぐにわかる。この建物の写真を撮っているとき,近くで「パーン」という乾いた音がした。こんなところで暴力団の抗争でもあるのか?と一瞬驚いたが,「ぱんぱぱん」という多数の音が連続して聞こえてくる。どうやら,花火を打ち上げていたようだ。花火は何発か打ち上げられたが,しばらくすると,打ち上げていた人はどこかへ帰っていったようだ。
 そして,昨晩。久しぶりに訪れてみると,トイレの位置が変わっていた。もっと河岸に近いところへ移動していたのである。建物にはとくに変わりはなさそうだったが,その手前に電柱が建てられており,自動車(廃車?)のようなものも置いてある。やはり,誰かがここに住むのだろうか?ふと土手の上を見上げると,そこにも仮設トイレがあった。そして,観覧席のようなものが用意されていた。ここで,演劇のようなパフォーマンスがあるのだろうか!?
 そして,今日の午後,電車の窓からこの場所を見ると,観覧席のようなものはすでになく,張りぼての建物などを取り壊す作業がおこなわれているようなようすが見えた。いったい,ここでなにがあったのだろうか?


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