撮影日記


2001年04月26日(木) 天気:はれ

断層

昨夜も,地震があった。最近,有感地震(体にゆれが感じる程度の地震)が多いように思う。実際,統計的に,数10年ごとに有感地震の多い時期が繰り返し認められるという。
 地震は,地下での,地殻の変動が地表に伝わる現象である。特に大きな地震の場合は,その変動の結果が,「断層」という姿で,地表に現れることが多い。濃尾地震の根尾谷断層や,兵庫県南部地震の野島断層などが,その代表例といえる。
 古い時代の断層は,地層や岩石を不連続に切るという形で見られることもある。一般に,砂や泥などが堆積してできた地層は,層状に美しい姿を見せることがある。

山口県の日本海側に,須佐という町がある。この海岸には,「畳岩」と呼ばれる場所があり,美しい層状の地層が見られる崖がある。この崖の岩石は,中新世(およそ500万年前〜2000万年前)中期の砂や泥が堆積した地層で,火成岩の貫入により,弱い変成作用を受けている。その岩体が,波による侵食や,海面の上昇・低下によって,美しい崖として見られるようになっている。
 ところで,ここは,一般には「須佐ホルンフェルス大断層」と呼ばれている。現地の案内看板などにも,そのような表記が見られることがある。ここで,「須佐ホルンフェルス大断層」という表現には,少なくとも2つの大きな誤りが含まれている。
 まず,この崖の岩石は,たしかに弱い熱変成作用を受けているが,「ホルンフェルス」と呼ばれるべきほどには,変成を受けていない。この崖の向こう側のあたりならば,明らかにホルンフェルスになっている。ただし,広義のホルンフェルスは,このような変成作用を受けた岩石すべてを指すので,完全な誤りというわけではない。
 もう1つの誤りは,この崖を「断層」と呼んでいることである。これは,侵食により生じた断崖であり,決して,断層ではない。恐らくは,「断崖」「地層」「層状の模様」などのイメージを合成して,勝手に作られた表現であると思われる。そして,現地の説明板などに,この点について正確に言及されているようには見えないことが残念である。

WWW上の検索サービスを利用して,「須佐」「ホルンフェルス」「断層」という言葉を検索してみよう。すると,多くのウェブページがヒットする。これらの中には,公的な機関により制作されたと思われるものも多数あるが,やはり「ホルンフェルス」「断層」という表現について,正確に言及されたものはほとんど見あたらない(「断層」という言葉を検索条件に含めば,そのような内容の怪しいページがヒットしやすいわけだが)。
 私たちは,ウェブページに書かれている情報を鵜呑みにしないように気をつける必要があるだろう。一方で,自ら情報を発信している人は,できるだけ十分に調べ,自分の言葉として書きなおすくらいの努力が必要と思う。


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