撮影日記


1997年07月20日(日) 天気:はれ

水蒸気の迫力

今日は津和野へ行ってきた。いまの愛車購入記念最初の遠出は秋吉台だったが,愛車の今回の長患いの退院記念は津和野になったわけだ。
 勘違いしている人が多いようなので念のために書くが,津和野は島根県にある。山口県ではない。

今年の春,ちいさな新聞記事が目にとまった。それは,津和野で温泉の探査中に偶然,間歇泉を掘り当てたというのだ。
 間歇泉とは,一定時間ごとに勢い良く噴出する温泉である。津和野の間歇泉は,最高で高さが55mに達するという日本で最大の間歇泉なのだ。
 今日は,その間歇泉を見て,撮影のためのロケハンをすることが主目的である。ボディ2台(Nikon F3,Nikon F-801),レンズ5本(AF NIKKOR 20mm F2.8S,Ai NIKKOR 28mm F2.8,AiNIKKOR 50mm F1.4,Ai NIKKOR 135mm F2.8S,AF Zoom-NIKKOR 35-70mm F3.3-4.5)のごく軽装備である。

津和野の町の中を愛車で通りすぎ,約4km行くと現地に到着する。田んぼのまん中に臨時の無料駐車場が用意されている。間歇泉からわずか200mしか離れていないにもかかわらず,道が超狭いので「駐車禁止」と書かれている間歇泉正面の道路上に多くのクルマが駐車されている。観光客どもの常識のなさにはあきれかえる。
 温泉水をなめてみた。なまぬるく,かなり塩辛い。よくあるナトリウム泉と呼ばれるものであろう。この間歇泉は約10分おきに噴出するのだが,周囲は田んぼ,塩分の強い温泉水が田んぼに降りかかると稲の生育に影響があるのだろう。間歇泉は,高く噴出しないように,覆いがされていた。風のないときやイベント時などには覆いがはずされるようである。覆いがされているとはいえ,間歇泉の噴出の勢いはすごい迫力である。

そのとき,ポーッという大音響がとどろいた。続いて地の底からうなるような重量感のある音。顔をあげると,向かいの高台の上をC57「やまぐち号」が走っているではないか!たまたま,「やまぐち号」が津和野に着くころに,私も津和野に到着していたのだ。CLが走っている姿を見るのは何年ぶりであろうか。かなり離れていたが,その音,姿の迫力はこんな簡潔な文章では表現しきれない。
 覆いのために間歇泉が絵にならないことがわかったいま,ターゲットは変更だ!
 津和野駅に向かい,「やまぐち号」の帰りの時刻をチェックする。15:23か,よし!鯉の住む水路などをスナップしながら津和野大橋へ向かう。山口線の鉄橋がよく見える場所だ。
 小型三脚をたてて,Nikon F3をセットする。レンズはAi NIKKOR 135mm F2.8Sを選定。露出はマニュアルで,鉄橋を渡るC57を確実に撮る。Nikon F-801 にはAF Zoom-NIKKOR 35-70mm F3.3-4.5をつけ,プログラムAEでなにも考えずとにかくシャッターを切る態勢だ。
 「やまぐち号」出発の10分前にもなると,カメラを持った多くの人たちが,橋の周囲に集結していた。とくに鉄橋の向こうに多くの人がいる。鉄橋のこちらから向こうへ場所を変えようとしている人の話を盗み聞きすると「こっちでは逆光だからダメだねえ」とのこと。それが1人や2人ではなく大勢いるのだ。どのような写真をつくろうと考えているのか,ということにもよるのだが,「逆光だからダメ」と決めつけるのは短絡的すぎないだろうか?しかも,太陽はまだ高く,とくに逆光補正が必要になるような状況じゃないと思うのだが。

やがて,遠くで汽笛が聞こえた。
 しだいに,車輪の音も近づいてくる。音がさらに大きくなった。茂みの向こうからC57が顔を出した。鉄橋にさしかかる。ここでNikon F3のシャッターをきり,すばやく巻き上げる。息をつく間もなく,画面の8割までC57が進んだところでもう1つ!
 さらに続けて,Nikon F-801を縦位置にかまえ,たて続けにシャッターをきる。そして,C57は通りすぎた。あとに客車が続く。狙いどおりだ!C57の煙が太陽を隠した!日食時に「すすフィルター」を通して見たときと同じ,オレンジ色の太陽だ。わずか10数秒のできごとであった。
 あえて,大勢とはまったく違うポジションでカメラを構えたのだが,それがよかったか悪かったかは現像しないとわからない。いまからどきどきする。
 今日は被写体が,大自然の水蒸気から,人工の水蒸気へ変わってしまった。しかし,どちらも迫力満点であることは否定できない。ふたたび装備を整えてチャレンジしたい。

Nikon F-801, AF Zoom-NIKKOR 35-70mm F3.3-4.5, XRG100
Nikon F-801, AF Zoom-NIKKOR 35-70mm F3.3-4.5, XRG100

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