撮影日記


1997年05月15日(木) 天気:くもり

3歩さがって見てみよう

35mm判カメラの場合,焦点距離50mmのレンズは「標準レンズ」と呼ばれている。どういう経緯で50mmレンズが「標準」になったのかは知らないが,たしかに無難なレンズのようだ。
 焦点距離が50mmと短いので,少し絞れば広角レンズのようにシャープな描写を示し,さらに絞るとかなりの被写界深度を得ることができる。F1.4程度の大口径比のものが主流で,開放で使えば望遠レンズのように背景のボケを活かした撮影ができる。大口径比であるから,光量の少ない夕方の撮影や,室内のフラッシュ撮影にも有利である。このような性質を活かせばあらゆる被写体に対応できる,という点から「標準」なのであろうか。

しかし,このような性質を意識せずに使用するときは,案外使いにくいかも知れない。パースペクティブを誇張した撮影もできないし,望遠レンズのような圧縮効果も期待できない。最近のようにズームレンズが主流になる前は,一眼レフカメラとセットで販売されるレンズは50mmレンズが多かったようだ。初心者がまず最初に手にするレンズが,50mmレンズだったと言える。
 初心者は,まず記念撮影的に風景を撮影することからはじめることが多いだろう。しかし,50mmレンズの画角は,自分が目にしている風景に対して,案外狭いのである。かといって,気になる1点だけを大きくして見ることができるわけでもない。そう,広角レンズでもない,望遠レンズでもない,やっぱり標準レンズなのだ。
 はじめて一眼レフカメラを手にしたころ,そういう理由から,なかなか思うように撮れなかったことがあった。
 しかし,たった一言のアドバイスで,この問題は解消したのである。

目で見て「よい」と思った位置から,3歩下がって撮れ。

50mmレンズの画角は,肉眼で見た感覚よりも狭いのである。ならば,少し後ろに下がればよい,それだけの単純なことである。そのうち,自然とはじめから「3歩下がった位置」でカメラを構えるようになるだろう。

はじめからズームレンズしか使っていないような場合は,このことに永久に気がつかないかもしれない。画角が狭いと思ったら,さっさとズームリングを回してしまうからである。


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